ニュースの事件報道を見ているときや、ミステリー小説やアニメを楽しんでいるとき、ふとこんな疑問を抱いたことはありませんか?
「なぜ、この犯人はこんな事件を起こしてしまったのだろう?」
「テレビでよく聞く『プロファイリング』って、本当に当たるの?」
こうした「犯罪に関わる人間の心と行動」を科学的に解き明かそうとする学問が、「犯罪心理学」です。
一見すると、ドラマの中だけの遠い世界の話に思えるかもしれません。
しかし実は、私たちの身近な防犯や、社会の安全を守るために欠かせない、とても実用的な心理学なのです。
この記事では、大学の専門書や公的機関のデータをベースに、犯罪心理学の基本から、人が罪を犯すメカニズム、そしてドラマと現実のプロファイリングの違いまでを、初心者向けにわかりやすく解説します!
この記事を読めば、犯罪心理学の全体像がすっきりと理解でき、ニュースやミステリー作品を見る視点が少し変わるはずです!
そもそも「犯罪心理学」とは?犯人の心を当てるだけの学問ではない
犯罪心理学とは「犯罪や非行、あるいはそれに深く関わる人々の心理と行動を、科学的に研究する心理学の一分野」です。
よくある誤解として「犯人の心(動機)を言い当てるための学問」と思われがちですが、それはこの学問のほんの一部に過ぎません。
実際の犯罪心理学は、事件が起きる前から、起きた後、さらには犯人が刑期を終えた後のことまで、以下のように非常に広い範囲をカバーしています。
- 犯罪の原因分析: なぜ人は罪を犯すのか、どんな環境が影響するのかを研究する。
- 捜査への応用: 犯人の特徴を絞り込む「プロファイリング」や、嘘発見器(ポリグラフ検査)の技術開発。
- 裁判での活用: 目撃者の証言がどこまで正しいかを心理学的に検証する。
- 矯正・更生: 刑務所や少年院で、受刑者が再び犯罪を犯さないためのカウンセリングやプログラムを行う。
つまり、犯罪心理学の本当の目的は、犯人を捕まえることだけでなく、「犯罪を未然に防ぎ、犯してしまった人を更生させて、安全な社会をつくること」にあるのです。
なぜ人は犯罪に走るのか?代表的な3つのアプローチ
犯罪心理学において、最も重要なテーマが「なぜ、その人は罪を犯してしまったのか?」という原因の追求です。
犯罪の原因論については、法務省が発行する『犯罪白書』などでも長年分析されていますが、心理学においては大きく分けて「3つのアプローチ(要因)」からアプローチします。
素質要因(本人の内面的な特徴)
1つ目は、本人が生まれ持った性質や、心理的な特性に注目する視点です。
例えば、「目先の欲求を我慢する力(自己コントロール能力)が未熟である」「カッとなりやすく衝動性が高い」「他人の痛みに共感しにくい」といった、個人の性格や認知の偏りが犯罪の引き金になるという考え方です。
環境要因(周囲の人間関係や社会)
2つ目は、その人が育った環境や、置かれている社会的な立場に注目する視点です。
幼少期の家庭環境(虐待やネグレクト)、学校でのいじめ、非行グループとの付き合い、あるいは経済的な困窮(貧困)などがこれに当たります。
心理学では「社会的学習理論」とも呼ばれますが、「周囲の環境から、犯罪につながる行動パターンを学んで(モデリングして)しまう」という現象が指摘されています。
状況要因(犯罪が起きやすい場所)
3つ目は、本人の性格や環境ではなく、「その場のシチュエーション」に注目する視点です。
どれだけ犯罪に走りやすい素質や環境があっても、防犯カメラが張り巡らされ、周囲に人の目がたくさんあれば、なかなか犯罪は実行できません。
逆に、暗くて人通りがなく、鍵がかかっていない家があれば、「つい魔が差して」行動に移してしまう可能性が高くなります。
現代の犯罪心理学の結論: 現代の犯罪心理学では、「これが唯一の犯罪原因だ」と一つに絞ることはしません。「本人の素質」「育った環境」「その場の状況」の3つが、複雑に絡み合った結果として犯罪が起きると考えられています。
具体例:アニメでおなじみ「プロファイリング」の現実と、身近な防犯心理学
ここで、私たちが日常生活で「犯罪心理学」を実感しやすい2つの具体例を紹介します。
ドラマやアニメの「プロファイリング」と、現実の違い
ミステリー作品で、主人公が犯行現場の状況を見ただけで「犯人は30代の男性で、几帳面な性格、おそらく現場の近くに住んでいる……」とピタリと言い当てるシーンがありますよね。
こうした手法を「プロファイリング(犯罪者プロファイリング)」と呼びます。
フィクションの世界では、天才的な直感やひらめきで犯人像を導き出しますが、現実の警察組織(科学警察研究所など)が行うプロファイリングは、徹底的な「統計学」と「データ分析」です。
過去に起きた膨大な同種の事件データ(犯人の年齢、職業、犯行の手口、遺留品など)と今回の事件を照らし合わせ、「過去のデータから見ると、この手口を使う犯人は○歳代である確率が○%」といった形で、確率論的に犯人像を絞り込んでいきます。
超能力ではなく、極めて科学的なアプローチなのです。
プロファイルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
日常で使える「防犯心理学」:割れ窓理論
犯罪心理学の知見は、私たちの身近な防犯にも活かされています。その代表例が「割れ窓理論」です。
「建物の窓ガラスが1枚割られているのをそのまま放置しておくと、誰もその場所に配慮していないとみなされ、やがて他の窓ガラスもすべて割られ、地域全体の治安が悪化する」という環境心理学・犯罪心理学の理論です。
実際、アメリカのニューヨーク市では、この理論を応用して地下鉄の落書きを徹底的に消し続けた結果、凶悪犯罪が大幅に減少したという有名な実例(ソース:警察庁の防犯啓発資料など)があります。
私たちの生活でも、「家の周りをきれいに片付ける」「ゴミ出しのルールを守る」「地域で挨拶を交わす」といった小さな行動が、犯罪者に「この地域は住民の目が光っているな」と思わせ、犯罪を思いとどまらせる強力な防犯心理学の地見(状況要因の排除)になるのです。
もっと犯罪心理学を知りたい方は、以下の書籍が読みやすくておすすめです。
まとめ:犯罪心理学は「社会の安全を守る」ための優しい科学
今回は、犯罪心理学の基本的な意味や目的、人が犯罪に走る理由、そして身近な具体例について解説しました。
- 犯罪心理学とは、 単なる犯人暴きではなく、犯罪の予防・捜査・裁判・更生までを科学する広い学問。
- 犯罪が起きる理由は、 「本人の素質」「周囲の環境」「その場の状況」の3つが複雑に絡み合っている。
- プロファイリングの現実は、 天才の直感ではなく、過去の膨大なデータに基づく「統計学」。
- 日常への応用として、 「割れ窓理論」のように、環境を整えることが最高の防犯になる。
犯罪心理学を学ぶことは、人間の心のダークサイドを見つめることでもあります。しかしその本質は、人間の弱さを理解し、どうすれば過ちを防げるかを考える「社会への優しさ」が詰まった学問です。
もしニュースを見るときや、ミステリー作品を手に取るときは、ぜひ「環境」や「状況」の視点にも注目してみてくださいね。
【参考文献】
- 法務省『犯罪白書』
- 警察庁 科学警察研究所(科警研)ウェブサイト
- 『犯罪心理学(有斐閣アルマ)』越智 啓太 著




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